マリアの心臓


おそらく、おれは、一瞬の火力量が人より強いんだろう。


着火したら、メラメラと燃え上がり、そして静かに燃え尽きる。

消えてもすぐに、誰かがマッチを擦ってくれる。


だから凍え死ぬことはない。

いつもその繰り返しだった。




「好きって言ってくれてうれしかった」

「じゃあ……!」

「……でも、」




今ならわかる。

おれは、あの熱に、焼かれていただけだと。




「すみません。センパイとは、付き合えません」




深々と頭を下げた。

他人にこんなことをするなんていつぶりだろう。


自分のことながら驚いている。おれ自身でさえこうなんだから、センパイはもっとひどいんだろう。




「……前向きに、考えてくれたんじゃ、ないの?」

「考えたよ」

「ならなんで……」

「これがおれが前向きに考えた結果」




正直、惜しいことしてる自覚はあるよ。


失恋したてのおれに勇気出して「好き」って言ってくれたおかげで、失恋の傷を癒してくれたし、センパイの顔ふつうにタイプだし。

鈴夏に伝言を頼むとき、「まーためんどうなヤツに好かれたね?」とか「あいつと付き合ったら縁切るの苦労するよ。ドンマイ」とか口酸っぱく忠告されたけど、そんなふうにはとてもじゃないけど見えないし。


恋愛一直線でかっけえオンナだと、おれは思うよ。


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