【完結】カルティナ姫と三人の王子〜目が覚めたら婚約者が三人いました〜


「お兄様の名前は、なんて言うのですか?」

「モルトワです」
 
 兄がプロのピアニストになったのは、まだ十代の時だった。 若くしてプロの道に進んだ兄を、お父様はすごく誇らしく思っていたんだと思う。
 だからこそお父様は、兄にすごく厳しくレッスンをさせていた。 兄がピアノを始めたのは、四歳の時だったと聞いている。
 
「モルトワさん、ですか。……あの、モルトワさんて確か、ヨーラ国で一度演奏してくれたことがありましたよね?」

「え?……あ、はい。確かそんな話を聞いたことがあります」

 確か兄の手紙にも、そんなことが書いてあった気がした。
 あれは確か、七年前くらいだったかな。……兄の手紙に、ヨーラ国という国で、平和を願い演奏したんだと書いてあった気がする。

「あの時の演奏は、とても美しかったです。僕もまだ十代でしたが、とても聞き惚れるくらい美しい演奏でした。……ヨーラ国の平和を願っての演奏は、素敵でした」

「そうですか。……兄はそんなにすごい人なんですね」
 
 こう言ってはなんだけど、兄とはしばらく会っていないせいか、兄の顔もあまり覚えていないのだ。

 お兄様、元気にしてるのかな。
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