追放されたハズレ聖女はチートな魔導具職人でした2
第一章 旅の聖女、おまけ付き
大地が滅びようとしている。

多くの人々をその内に抱き、生活の場となっていた大地が死に瀕している。

アクロニア――またの名を水の都。

王都南部、ディサロ荒野の中央にあり、周辺地域に豊富な水を供給する役目を担う要の街だ。

南部特有の強い日差しの中で輝く白い建物と街中に張り巡らされた水路が織りなす美しい光景は、この地を王国随一の景勝地たらしめていた。

都の中心に座する水の神殿には代々、水に属する加護を持つ聖女が赴任してきた。

初代の水の聖女がこの地に小さな神殿を作り、加護の力を用いて豊富な水を導くことで、周囲に人々が集まり、王国南部は栄えることになった。この水の都は聖女の力によって作られたため、維持するためにもまた聖女の力を必要とするのだ。

水の神殿の聖女はまさに、ディサロ荒野を、名前の通りの荒野にしないための生命線だった。



「…………」

水の神殿の当代の主、パパラチア・ディアは神殿の奥深く、女神像の広間にて祈りを捧げていた。

固く結ばれた唇、眉間に刻まれた深い皺、そして苦しげな呼吸。

己の心身を削るかのような祈りの時間を、彼女はすでに三時間も過ごしていた。

(女神よ、なにとぞ私の祈りをお聞き届けください。故郷のためならば、この命のすべてを捧げても構いません。どうか、どうか私の願いを……!)

石畳の上で膝立ちとなった彼女の周囲には、彼女の汗が滲んでいた。

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