離婚しましたが、新しい恋が始まりました


「もしかして、絹田先生からご紹介いただいた光宗磐先生でいらっしゃいますか?」

「はい、そうです」
「今日はわざわざ、夫を偲ぶ会にお越しいただいて……」
「はあ……」

「絹田先生からお聞きだと思いますが、この子が娘の結衣ですの」
「娘さん……ですか?」

派手な女性が、自分の隣に立っていた若い女性をぐっと前に押し出してきた。

「はじめまして、有沢結衣です」

見た目は濃い化粧で実年齢がわかりにくかったが、幼い声で喋る女性だった。

「どうも」
「今年の春から、女子大の四年生になりますの」
「そうですか」

この時になって、やっと磐は自分の勘違いに気がついた。結婚相手を探していたのは紬希ではなく、この甘ったるい声で話す結衣の方だったのだ。

(絹田教授……やってくれましたね)


面倒くさがりの教授は、たまたま側にいた磐に縁談を振ってきたのだろう。
教授にしてみれば、有沢家に行かせるのは誰でもよかったのだ。どうりでゴニョゴニョと濁して、相手の事を詳しく話してくれなかったっはずだ。

(俺は紬希に会いに来たのに!)


磐は焦ったが、その日はそれきり彼女に会うことは無かった。



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