離婚しましたが、新しい恋が始まりました


その日は紬希とはもう会えないかと思っていたが、処置を終えた磐がERを出たら彼女が患者の家族に話しかけていた。不安そうな高齢の妻に、話しかけている。

「廊下のイスにお座りになっていて、お疲れではありませんか?」
「はあ、眠れないし腰が痛くて……」
「もうすぐお部屋にご案内できますからね」
「主人は、大丈夫でしょうか」
「落ち着いておられます。後から先生が説明して下さいますから、安心して下さい」

優しい落ち着いた声だ。高齢者にも聞き取りやすいように気をつけてゆっくり話している。その声をずっと聞いていたいほどだ。

それから彼女をよく見ていたら、さっき担当を変わった若い看護師にもアドバイスをしている。
どれだけ周りに気を配っているのか磐は感心するばかりだった。

(これだけ働いていたら、彼女は疲れが溜まっていそうだが……)

彼女は何に癒しを求めるんだろう……ふと、磐はそんな事を考えた。




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