離婚しましたが、新しい恋が始まりました


割り勘で支払いを済ませ、定食屋を出た時に桂木が改まって紬希に向き合った。

「また、お食事に誘ってもいいですか?」
「桂木さん……」
「時々、こんな風に気軽に会っていただけたらなと思うんです」

悪意のない、淡白とも思える誘いだった。

(この人なら、男性と意識せずに付き合えるかも……)

「食事だけなら……」
「嬉しいな」

紬希が答えると、桂木は少年のようにニコッとした爽やかな笑顔を見せる。
連絡先を交換して、お互い気軽に連絡を取って都合が良ければ会うことになった。

「じゃあ、また」
「おやすみなさい」

久しぶりに、紬希はリラックスした気分を味わった。
さり気ない桂木の心遣いだろうか、歩いている時も食事中も適度な距離感が保たれていた。

(私が男の人がニガテってわかったのかしら)

仕事中は気を張っているから大丈夫だが、普段はどうしても男性と話したり行動するのは避けていた。だが、桂木とはありのままで話せたので、紬希にとって彼は貴重な存在かもしれない。

(少しずつ、苦手意識を変えていきたい)

紬希のささやかな望みだった。





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