離婚しましたが、新しい恋が始まりました


「だから、僕は紬希ともう一度……」

いきなり貴洋が紬希の腕を力任せに引っ張ったので、紬希はバランスを崩してよろめいた。

「痛いから、離して下さい」
「紬希!話を聞いてくれ」

病院の近くで押し問答なんてしたくないと紬希が思っていたら、不意に身体が楽になった。

「嫌がってるじゃないか」

光宗が、紬希を庇うように立っていた。貴洋の腕を捻り上げて離してくれたらしい。

「お前……光宗磐か?」

「ああ。久しぶりだな、秦野。結婚式以来か」
「ドイツから帰ったとは聞いていたが、ここで働いていたのか?」
「大学病院と掛け持ちだがな」
「妻と話していただけだ。誤解しないでくれ」

顔色をなくした貴洋が弁解を始めたが、磐は容赦しなかった。

「妻?秦野は彼女と離婚したんだろ?」

「いや、チョッと用事が……」
「有沢さんの方には用が無さそうだが?」

光宗があまりに堂々としているので、貴洋もそれ以上は何も言えずに引き下がった。

「紬希、さっきの話考えてくれ」


有り難くない言葉を残して、貴洋は帰って行った。




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