離婚しましたが、新しい恋が始まりました

 今さら何の話があると言うのだろうか。ふたりの結婚生活は、彼の浮気で三年前に終わったのだ。

「何を頼まれているのかわかりませんが、何もお話しすることは無いと思います」
「紬希……」

「失礼します」

その場を立ち去ろうとした紬希の腕を、貴洋はギュッと握った。

「待ってくれ。話くらい聞いてくれてもいいだろう?」
「痛いから、離して下さい!」

思わず振りほどこうとしたのだが、意外に強い力で握っている。

「僕はもう一度、君とやり直したいと思ってるんだ」
「は?今、何て?」

信じられない言葉が聞こえて、紬希は聞きかえしていた。

「だから、もう一度……」
「あなた、再婚してるんですよね」

バカにされている気がして、つい強い口調になってしまった。

「ああ、だが……」
「お子さんは?」

恋人の妊娠は狂言だったと叔父から聞いていたのだが、紬希は敢えて貴洋に聞いてみた。

「あれは……間違いだったんだ」

「間違い?」

端正な貴洋の顔が苦しそうに歪んだ。

「だから、里華が勘違いだったって……」
「あの時はそうだったとしても、この三年間、奥様は妊娠されてないの?」


「ああ……」

貴洋の悲しそうな声を聞いて、すこしだけ紬希の心に同情が湧いてきた。

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