離婚しましたが、新しい恋が始まりました
磐が紬希の腕をとった。
「だいぶ強く掴まれていたが大丈夫か?捻ってないか?」
「あっ!」
紬はその手をパシリと払いのけてしまった。
「だ、大丈夫です。ありがとうございました」
助けてくれたのに申し訳ないが、急に触れられたものだから身体が勝手に拒否してしまった。
「失礼します」
紬はそのまま立ち去った。助けてくれたというのに、光宗の顔をまともに見られない。
心配してくれたのに、こんな時でさえ男性に触れられることを拒んでしまったことが切なかった。
小走りに病院から遠ざかりながら、紬希は涙が零れそうになるのを感じていた。
それは、貴洋に再縁を迫られた事への涙ではなく、光宗に対して過度に反応してしまった自分が惨めで悲しかったのだ。
(私、どうしたらいいんだろう)
この日、紬希は心から変わりたいと思った。
先日秦野医師が忠告してくれたのは、これだったのだ。
妻や息子から復縁を迫られるかもしれないから気をつけるようにと、伝えに来てくれたのだ。
その夜以降は無理な要求は無かったので、紬希はホッとした。
だが、もっと面倒な人物が現れるとは、紬希にも予想できない事だった。