お館様の番選び
獣人の町にある神社にはわたしたち獣人の身体の一部を神社に奉納するという習わしが古くからあった。

身体の一部といっても抜けた歯や切った髪を納めるだけなのだが、もとはお館様の一族に人身供儀、動物供儀をしていた時代の名残りだという。

獣人の町で赤ちゃんが生まれると親はご先祖への報告を兼ねて赤ちゃんの産毛を神社に納める。

またこの町で番が見つかることを願って身体の一部を神社に納めて帰る旅人もいる。

神社の本殿とは別に奉納物保管所があり、そうやって奉納された身体の一部は試験管のような容器に入れられ、種族別に分け、一定期間(生存しているであろう期間)大切に保管される。

それをお館様の一族が管理し、成人を迎えた獣人が番を探す場合にのみ奉納物保管所を利用することを認め、番が見つかったら、神社に申請し、相手となる番が承諾して初めて番同士で会うことが許された。
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