お館様の番選び
朧を説得することは難しいと判断したお館様と父は、次にわたしに変わるように言った。

「あかり。お前も裾野家の人間。朧様が今、どうしないといけないか分かっているだろう。」

「あかりちゃん。今まで朧の世話をよくしてくれたことはとても感謝している。辛い役目を押しつけて申し訳ないが、でも今は朧を突き放してくれないかな。」

「…はい。お館様。」

そうするのは当然だと思った。

最初は理解出来ず、理由を探ろうといつも以上にわたしにまとわりついていたが、態度を一向に変えないわたしに、何か言いたげにしながらも、両手を握りしめ、背を向ける日が多くなり、朧は、徐々に距離を置くようになっていった。

わたしがお館様のお屋敷を訪ねることも無くなり、父の様子から番選びも以前よりは順調に進んいるようだった。

寂しく思いながらも、わたし自身も成人を迎える時期に入っていたので、近い内にわたしも自分の番を見つけ、裾野家を出る日がくるのだろうと思っていた…。

…だが、あの満月の夜を境に話は思わぬ方向に進んでしまったのだった…。
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