ただ、まっすぐ君を想う。

「じゃあ、私
彼氏迎えに来たみたいだから行くね
凰貴(おうき)ゆっくりしていって…」



お姉ちゃんが凰ちゃんにそう言いながら

リビングのコタツから出た



アイロンでセットされた髪から

ヘアオイルの匂いが香った



また新しい服買ったのかな?

見たことないワンピースを着てた



見たことないネックレスが

さっきから首元で光ってるのが気になってた



クリスマスに彼氏に買ってもらったのかな?



「なんだ…さっきから愛(あい)
ずっと携帯気にしてると思ったら
デートか…
オレ、明後日帰る予定だから
その前にまた顔出すよ」



そーだよ、お姉ちゃん

せっかく凰ちゃんが来てくれてるのに…



まだ30分も話してないよ



「明後日?
凰貴こっちで年越さないの?
そんなに仕事忙しいの?
もっとゆっくりしていけばいいのに…
またしばらく帰って来れないんでしょ?」



ホントにそーだよ!

それなのにお姉ちゃんは彼氏優先



いつでも会えるでしょ!

あの男とは



「んー…そーなんだけど…
まぁ、こっちにいても
かわいい彼女がいるわけでもないし…」



彼女



「ハハ…その言い方、向こうにいるのね」



凰ちゃん

いるの???



「ま、別に仕事が忙しいわけでもなくて
休みは無駄にたっぷり3週間もあるんだ」



「いーなー、凰ちゃん
私の冬休みより長い」



「だよな
学生でもそんなに休まないよな
ま、家でやることはあるんだけどさ…」



凰ちゃんの優しい声

凰ちゃんの優しい眼差し



好きだな…



「あ、私、明後日いないかも…
彼氏の実家行く約束してるから…」



お姉ちゃん

サイテー



「へー…結婚の挨拶?
どれくらい付き合ってんの?」



「んー、今の人は3ヶ月ぐらいかな…
だから、まだ結婚とか
そんなんじゃないけど…」



「次会う時は愛の結婚式かと思ったけど
そーでもないか…」



「ハハ…わかんないよ
凰貴の結婚式かもしれないし…」



「結婚か…
お互いそんな年だからね…」



凰ちゃんがしみじみ言った



結婚



私にはまだ

未知の世界



「じゃ、凰貴、元気でね!」



「あぁ、愛も…」



「気をつけて帰って」



「うん、ありがと」



「じゃーねー
いってきまーす
あ、雛(ひな)
ママ帰って来たら言っといて
夕飯いらないって…」



「うん、いってらっしゃい」



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