きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
体育館に足を踏み入れると、バッシュが床を蹴るキュッキュッとした音が響いていた。

「生で試合を見るのなんて初めてだよ~」

きっと興味ないはずなのに、「来てくれない?」という誘いを二つ返事で引き受けてくれた鈴ちゃんが、隣で目を輝かせた。

「生で観ると迫力あるね?」

「そうだよね」

悠斗の試合へ定期的に足を運ぶようになったのも、悠斗のお母さんに誘われて試合を見に行ってからだったことを思い出す。

サッカーどころかスポーツに対して全く興味がなかったのに、初めて試合会場を訪れて直接試合を見た時、試合会場にしかない迫力と選手の必死さ、一体感のようなものを幼心にも感じて、とても興奮した。

……確か試合が終わって「帰ろう」と私を促したおばさんに、「もっと見たい!」と泣きながら駄々をこねて困らせちゃったんだっけ。


「それで……どこに行けばいいんだろう?」

客席からコートを見下ろす。

コートの中にはちらほら選手はいるけれど、まだみんなTシャツを羽織っているからきっと試合前のアップ中なのだろう。

「応援席の場所って決まっているよね?」

「決まっている、はず……」

今更後悔しても遅いけれど、応援席の場所ぐらい事前に聞いておけばよかった。

「それにしても応援の人、少ないね?」

鈴ちゃんは「会場はここであっているよね?」と首を傾げた。

「うん、合っているはず。予選の初戦って言っていたし、今日はそんなに観客もいないんじゃないかなあ……」

とりあえずここから見ようか、と適当に席を決めた時、背後から私たちを呼ぶ声が聞こえた。
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