きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
まだまだ続いてほしいのに、幸せな時間はあっという間に終わってしまう。

ナレーションが締めの言葉を告げると、ゆっくりとドームが明るさを取り戻した。

さっきまで見ていた星の輝きとは違う人工的な明るさに、少しだけ寂しさと虚しさを覚えた。

「綺麗やったなあ……」

宮本くんは椅子に座ったまま、余韻に浸るようにゆっくりと呟く。

「うん、すごく綺麗だったね」

何も映し出されていないスクリーンを見ながら返事をする。

まだ、あと少しで良いから、この場所にいたかった。

「俺、小さい頃から星、好きやねん」

「そうなの?」

「昔、親にキャンプに連れて行ってもらった時に、初めて天の川見て感動してさ。それから、星を見るのが好きになった」

「そうなんだ。ロマンチックだね」

「そうやろ」

彼はふふっと笑う。その笑顔が愛しくて、気が付けば自分の口角も上がっていた。


「モルディブ、行ってみたくなっちゃった」

ポツリとつぶやくと、宮本くんが僅かに私のほうを向いたのが、視界に入った。

「いつか大人になったら……行けるのかなあ」

モルディブに行くには、どれくらいお金がかかるんだろう。

そんなこともわからないし、わかってもきっと今の私じゃ用意出来ないだろう。

それでも、やっぱり行ってみたい。

「一緒に行こうや、モルディブ」

予想外の言葉に、ゆっくりと宮本くんへ視線を移す。

目が合うと、彼は柔らかい笑みを見せた。

「俺、高校卒業したら、プロのバスケットボール選手になりたいねん。プロになって稼いで、高橋にモルディブ旅行プレゼントするわ」

宮本くんの手が私の頭にのびる。

彼は微笑みながら、ゆっくりと私の頭を撫でた。

「だからもうちょっとだけ待ってて? 一緒に行ってー…本物の星空、一緒に見よう」

彼の言葉が嬉しくて、幸せで、不意に目に涙が浮かぶ。

「楽しみにしててな?」

今の私は何の確約もない好きな人の誘いに頷くことで精一杯なぐらい、まだまだ子どもだけれど。

それでも。

ねえ、宮本くん。私ね、あなたのことが好きだよ。

この気持ちは本物で、もしあなたに伝えたら、あなたは何と言うんだろう。
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