きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
翌朝、いつもより少し遅めに学校へ行くと、先に来ていた鈴ちゃんがゾッとした様子で私を見た。

「どうしたの、今日……」

「ああ、顔?」

自嘲気味に笑う私とは対照的に、鈴ちゃんは困惑した表情を浮かべた。

「なにがあったの?」

自分の席へ向かう私の後をトコトコとついてくる鈴ちゃんに、「ちょっとね」と言ってごまかす。

今ここで話してしまうと、泣いてしまいそうだった。

「……真凛」

「大丈夫だよ」

自分でも呆れるぐらい下手な笑顔を作る。

「ちょっと……昨日宮本くんと喧嘩しちゃったんだ。夜、イライラして寝られなかったから寝不足で」

”イライラして”か、それとも別の気持ちが沸き起こってきてかはわからないけれど、彼が原因で寝不足になったのは本当だ。

目を閉じると、

『ただの友達に決まってるやん』
『たまたま出かけただけや。付き合ってるわけないやろ』

何度も何度も彼の言葉が頭の中で繰り返され、そのたびに心臓がギュッと強く握られるような気がして、寝付けなかったのだ。


「そっか……」

鈴ちゃんは心配そうに私の顔を覗き込む。

「話したくなったら話してね……?」

本当は気になっているはずなのに、無理に言わせない彼女の優しさが心に響く。

「うん、ありがと」


「……高橋」

今、一番聞きたくない声が頭の上から聞こえる。

無視したい。

けれど無視するのも、大人げない気がする。

どうしようか、と迷っていると、鈴ちゃんは「私、トイレに行ってくるね」と席を外した。

「うん、わかった」

彼女の背中を見送りながら、カバンを机の横にかける。

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