きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
一週間の試験週間が終わって、また今日から部活が再開する。

明後日には予選を控えているし、しかも一日二試合というハードなスケジュールやから、今日から気を引き締めないとあかん。

試験が終わったことにクラスメイトたちが歓喜の声をあげる中、部活のことを考えると少しの解放感すら味わう余裕がなくて、俺はそそくさと部室へむかう。

他のクラスの前を通った時、ちょうど教室から出てきた佐々木と出くわす。

「お疲れ」

「おー、お疲れ」

挨拶だけ交わし、二人で黙って廊下を歩く。


「……最近、大丈夫か?」

佐々木が問いかけてきたのは、ちょうど部室棟が見えてきた時だった。

「……大丈夫って?」

「最近、見る度にやつれている気がするけど」

戸惑いながらもはっきりと尋ねる佐々木に、隠すことも無く「そうかもな」と答える。

「最近、あんまり寝れてないから」

高橋から連絡が来た日から、ほとんど寝ることが出来ていなかった。

正しく言うと、一時間ほど寝ては目が覚める、というのが繰り返されていた。

疲れているし寝不足やから、すぐに眠りにつくことは出来る。

けれど、夢に泣いている高橋が出てくる。

「なんで泣いてるん」
「どうしたん」

夢の中でいくら声をかけても、高橋には聞こえていないのか、何も反応しない。

ただ、泣き続ける。その姿を見るのが辛くて苦しくて、どうしても起きてしまう。


高橋はもう俺のことを全く気にしていないのか、恐らく一切俺を視界に入れることなく学校生活を送っている。

昨日だって、試験終わりに伊藤と一緒に声をあげて笑い合ってたし。
今日だって、宇山と一緒に単語帳を見ながら登校してきてたし。

あいつにとって、俺はもうどうでもいいんかな。

そういえば、元々はあいつ、俺のことなんてどうでも良さそうやったよな。

初めて話した日に、俺のこと”興味ない”って真正面から言ってきたぐらいやったしな。

きっと高橋の中では……俺の存在は、無かったことになってるんやろうな。
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