きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「あのね、おばさん」

悠斗とそっくりの深いブラウンの瞳を持つ目を見る。

「……私、大事に思っている人がいるんだ。私が今までで一番辛いと思った時、傍にいてくれた、とっても優しい人」

やっぱり嫌いにはなれないや。
好きだという気持ちを無しにすることはできないや。

だって、やっぱり私、宮本くんのこと、まだこんなにも大切に思っている。

「その人もね、悠斗と同じようにすごく部活頑張っていて、今日、大切な試合に臨んでいるんだ」

「そうなの?」

悠斗のお母さんは立ち上がると、「それなら早く行って?」と私の腕を引っ張って、立たせた。

「今から行けば間に合うかしら?」

「うん、多分……。おばさん、ごめんね。ありがとう」

「何を謝っているの。ほら、早く行かなきゃ」

自分の息子とは別の人を応援しに行くのに、背中を押してくれる悠斗のお母さんは、なんて優しいんだろう。

「行ってくるね」

「うん、気を付けて。また話聞かせてね?」

茶目っ気たっぷりに微笑む悠斗のお母さんに頷くと、私は急ぎ足で階段を降り、出口へ向かう。

試合会場を出た時、私の背後で後半戦の始まりを知らせるホイッスルが鳴った。
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