きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「……あのさあ」

ため息をつきたい気持ちを抑えて、彼を見る。

「窓際の後ろなんていう良い席、滅多に引き当てられないじゃん。せっかくだから私はこの席を堪能したいし、何よりも穏やかに毎日過ごしたいわけ。それに、その気持ちはそっちも同じでしょ?」

いきなり話し出した私に、宮本くんは怪訝そうな顔をした。

私は彼から目線を外し、続ける。

出来ればこの瞬間ですら、彼と関わりたくない。
けれどこれから平穏な日々を手に入れるために、これぐらいの時間、耐えてやる。

「あなたが私のことをすごく嫌いなことぐらいもうわかっているし、正直私も同じ気持ちなの。だからお互い、極力関わらないようにしない?」

「え、ちょ、え……? 関わらないように?」

私の言っていることがわからなかったのか、宮本くんは難しい顔で問い返す。

「うん。別に隣の席だからって、関わることはないでしょ」

日直だって出席番号順で行うし、掃除当番だって縦の列で各場所に割り振られている。

毎日隣に座らないといけないことは嫌だけれど、だからといって、何か話したり協力したりしなければいけないことは何も無いはずだ。

私の提案に、彼は困惑した表情で視線をキョロキョロと動かした後、「いや、まあ、そうやな……うん」頷いてくれた。

「じゃあ、決まりね。ありがとう」

よかった。

宮本くんと隣の席なのは正直好ましい状況ではないけれど、関りを最小限にすれば、きっとこの席の居心地は良いはずだ。

いつの間にか小雨が降りだしたグラウンドを、ぼんやりと見つめる。

――まさか穏やかな日々は訪れない、ということは知らずに。
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