きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「また宇山のこと見てんの?」

「宮本くん……!」

驚きで椅子から転げ落ちそうになる。

バスケ部のジャージを着ている彼は「よくもまあ、飽きずに見続けられるなあ」と、呆れたように笑った。


“極力関わらないようにしよう”

私と宮本くんの間には確かに交わした約束があるはずなのに、数学の課題ノートを貸して以来、何故か少しずつ話しをするようになっていた。本当に、どうでも良い些細なことばかりだけど。

「そのおやつ、ちょうだい」
授業の合間にお菓子を食べているとねだられたり。

「この問題わかる?」
彼のからっきしダメな英語が、私にとっては得意科目だと知って、授業や宿題でわからなかったところを聞いて来たり。

「佐々木、昨日居眠りしてて担任に呼び出されたんやって」
共通の友人のことを話したり。

宮本くんは、私が彼に興味が無いということを知っているからか、それとも悠斗のことが好きだと知っているからか、自分のことを好きになる可能性は無いと判断したのだろう。

私から話しかけることはほとんどないーというか、多分今までで一度もないーけれど、彼はお喋りなのか、一日に数回話しかけてくるようになった。


「今、部活の時間じゃないの?」

「ああ、うん。けど、今日中に提出しないとあかん書類、机の中に入れっぱなしにしてて。取りに来た」

「そっか」

私は一言だけ返すと、またグラウンドに視線を戻す。

あ、今、悠斗がボールを蹴っている。

「……き……の……と」

うわ、すごい。
あんなに離れたところにいる人に、スッとパスをだしたよ。

やっぱり悠斗うまいな。すごいな。

フッと笑った時、頭上から「聞いてる?」と声が降ってきた。

振り返ると、さっきより近い位置にいる宮本くんと目があった。

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