きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「けどね」

胸のモヤモヤを吐き出すように小さくため息をつき、宮本くんから、斜め左にある悠斗の席へ視線を移す。

うーん、“どこが好きなのか”という質問に答えるのは、意外と難しい。

悠斗の好きなところはたくさんある。

それでもやっぱり、一番は。

「悠斗は私のヒーローだから、かな。悠斗ね、私が困っていると絶対に助けてくれるんだよ」


当たり前のように傍にあった彼の優しさに気づくことが出来たのは、中学3年生の冬だった。

その日の少し前、私は受験最後の外部模擬試験で、第一志望校の合格可能性評価で、E判定をだしてしまった。

合格可能性評価とは、自分の成績結果に基づいて志望大学に合格する可能性が示されるもので、合格可能性80パーセント以上を示すAから、合格可能性20パーセント以下を示すEまで、AからEまでの5つのアルファベットで表される。

私はずっとAかBが続いていて、高校三年生になってからは担任の先生から「普段通り落ち着いて解けば、必ず合格できる」とお墨付きをもらえるほどだった。

実際、三回に一度はA判定を取ることが出来るぐらい成績は安定していた。


しかし、最後の最後で最も悪い結果を出してしまった。

確かに試験中もそれほど手応えを感じられなかったけれど、それでも「悪くてCかな」という感じだった。

それなのに初めて「E」という文字を見て、その時初めて焦りと不安を感じ、とにかく勉強に励んだ。

それはもう、寝る時間はもちろん、ご飯を食べる時間も、お風呂に入る時間も、通学する時間も惜しんで。

少しでも勉強時間を確保するために、自分の学習机で問題を解きながらご飯は食べたし、お風呂に入りながらリスニングの勉強をした。

睡眠時間だって、外部模擬試験の結果が出る前と比べて毎日二時間は減らして、とにかく足を引っ張っている数学の復習を行った。

ただ、勉強に励めば励むほど、身体と心はボロボロになっていく。

皆の前では平気なフリをしていたけれど、本当は、苦しさとプレッシャーで逃げ出したかった。

実際、受験を辞めることが出来たらどれほど楽だろう、と、ベッドの中で泣いてしまう日もあった。

それぐらい、精神的に不安定になってしまっていた。


そんな日が二週間ほど続いた日だった。悠斗が、声をかけてくれたのは。
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