きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「帰るぞ」

悠斗は既に部活を引退していて、その頃にはいつも一緒に帰っていた。

ただ、いつもと違うのは、“悠斗から” 声をかけてくれたことだった。

珍しいと戸惑う私の様子に気を留めることなく、彼は私の腕を引っ張って教室から連れ出すと、家の近くにある公園に寄った。

そして私をベンチに座らせると、カバンの中から大量のお菓子を取り出した。
しかも、私が好きなお菓子ばかり。

そして、何が起きているのか理解しきれていない私に、言った。


「俺の前では、無理して笑わなくても良い」と。


その瞬間、私の目からは涙が零れ落ちた。

誰も気づいていなかった。
親友でさえ、親でさえ、落ち込んでいる私に気づいていなかった。
苦しんでいる私に気づいていなかった。

自分の近くにいる人たちが気づかない程、隠せていると思っていたのに。

それでも悠斗は、気づいてくれた。何か変だと気づいて、励まそうとしてくれた。

きっと私が一番好きなものが何か考えて準備してくれたのだろう。

不器用な彼の励まし方がとても胸に染みたし、逃げ出したかったこの世界に居場所を見つけられたような、安心感さえ覚えた。

そして思った。

「悠斗にずっと側にいて欲しい」と。
「悠斗が隣にいてくれるだけでいい」と。

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