きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「今日の放課後、待っといてくれへん?」

「え?」

「俺が部活終わるの、待っといてくれへん?」

「……どうして」

「家の近くまで送っていくわ」

それだけ言うと、宮本くんは私を追い抜かし、スタスタと教室へ向かっていく。

「え、待ってよ」

全然状況を理解できない。

送っていく? 宮本くんが? 私を? どうして?

「ねえ、宮本くん」

宮本くんは身長が高い分、足も長いらしい。

小走りで彼に追いつくと、「なに?」と尋ねられる。

「どうして?」

「なにが?」

「どうしてわざわざ……」

「だって」

私の問いかけに、宮本くんは「この世の終わりみたいな顔してるんやもん」と答える。

「もし帰り道、ふらっと海にでも飛び込まれたら困るし」

「いやいや、さすがにそんなことはしないよ。この近くに海はないじゃん。どうせなら、川への飛び込みじゃない?」

「あ、ほら! 飛び込む気やん!!」

宮本くんは、大袈裟にギョッとした様子で私を見た。

「高橋」

彼はピタリと足を止めると、改まった様子で私を見る。

「なに……?」

「お前、アイスすきやろ?」

「アイス? 好きだけど」

「よし」

宮本くんは、勢いよく私の頭に、ポンッと手をのせた。

「放課後待っていてくれたら、今日は俺がアイス買ってあげるわ。しかも、あの高いやつ」

彼は高級で美味しいアイスクリームの名前を告げた。

「うそ……!」

「しゃーなしやで? その代わり、俺が部活終わるまで残れよ?」

「うん、わかった!!」

「お前チョロすぎやろ」

「へへっ」

一緒に帰る相手、ましてや帰り道にアイスクリームを買ってくれるのが宮本くんというのは少し奇妙な気がする。それでも、失恋をした今日、誰かが傍にいてくれるのは心強かった。
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