依存妻と狂愛する俺
朝、未雷が目を覚ます。
腕の中で昨晩の寝相のまま、風愛がぐっすり眠っていて穏やかな気分になる。

“風愛が腕の中にいる”
それは未雷にとって、何よりも幸福なことだ。

未雷は肘枕で、風愛の寝顔を見つめていた。
風愛が寝返りをうって、更に未雷に抱きついた。
そしてゆっくり目を開けた。

「ん…おはよ…未雷くん」
未雷を見上げる、風愛。

「おはよ。何?ジッと見つめて…////
朝から、やらしい気持ちになるよ?」
「嫌な夢…見ちゃって……」
「そう…どんな?」
風愛の髪の毛を払いながら、優しく問いかける。

「未雷くんが、離れていく夢」
「残酷な夢だな」
「でしょ?」

「でも大丈夫。
俺は絶対、何があっても、風愛から放れたりしない。
いつも言ってるよな?
俺の愛は、普通じゃない。
“狂ってる”って」
風愛を組み敷いて、頬を撫でた。

「うん…」

「“放れる”なんて選択肢、存在しないんだ」
「うん」

「風愛を“愛さない”“見ない”“話さない”“触らない”“放れる”
それ等は、俺の中に存在しない━━━━」

風愛を見下ろす、未雷の真剣な瞳。
綺麗で、真っ直ぐな瞳。
しかしその瞳の奥底には……黒く深い闇がある。

風愛はその黒い狂愛にすっかりはまり、逃れることができないでいるのだ。


その日の午後、街へデートに出掛けていた二人。
容姿が整っている未雷は、街中で必ず注目を浴びる。

その為風愛は、未雷にべったり腕にしがみつくようにくっつき歩く。
その姿は未雷にとって、とても嬉しい行為だ。

「未雷くん、今夜からイルミネーションイベントだって!行きたいな」
「ん。いいよ」
「ありがとう!楽しみだね!」

辺りは暗くなり始めた頃、ライトアップされ街が華やかになる。
「うわぁ~!!今年も華やかだねー」
風愛が歓喜の声をあげる。

「そうだな。年々パワーアップしてる」
「今年はないね」
「何?」
「あの…ハートの…////」
「あー去年、風愛がはしゃいでたハートのベンチ?」
「うん、可愛かったなぁー!あの装飾。ほんとにハートの中にいるみたいに。
写真、撮ったよねー!」
「カップルが、こぞって写真撮ってたな」
「あーゆうベタなのって、女の子好きだったりするからね!」
「そうだな」


「ライと、風愛ちゃん?」
背後から声をかけられ、振り向く。

(こう)
青沼(あおぬま)くんだ!」

「デートですか?」
「うん!青沼くんも?」
風愛が、青沼の隣にいる女性を見て言った。

青沼 煌はブルー軍のリーダー。

未雷をトップとして、下に雄飛がいて、赤星率いる“レッド軍”と青沼率いる“ブルー軍”がある。

喧嘩が強く、元・暴走族のレッド軍と、賢く、イケメン揃いのブルー軍。

「あ、いえ。僕は仕事中ですよ」
「えー、キラ!私達は“デート中”でしょ?」
女が青沼の腕にすがりつき言う。

青沼は“キラ”という源氏名のホストで、今は同伴中だ。

「そうだね!ごめんね!」
青沼が女を見下ろし微笑む。

「それより!この女誰よ!?」


「━━━━━━この女?」
その瞬間、場の雰囲気が凍った。
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