You and I ~あるバカップルの平和な日常~
愛子も、ここへ引っ越してくる前は、放課後はいつも東京のマンションで一人きりだったという。

ご両親は当時、都心の美容院で働いていて、お兄さんたちは進学で親元を離れていたから。

この町に引っ越してきたのは、田舎で一人きり美容院を営んでいるお祖母さんのことが少し気がかりになってきた頃、離婚した伯母さんが、子供(といっても愛子よりかなり歳上)と共に出戻ってきたので、思い切って家と店をリフォームし、みんなで暮らすことになったとのこと。

放課後いつも一人だった頃、ご両親に愛されていないと感じたりしなかったかと聞いたこともあるが

「たまに寂しくなることはあったよ。でも、愛されていないと感じたことは一度もない。まぁ、今の方が楽しいけどね」

そう言っていつものようにニコニコ笑っていた。

いつからか僕は、この少女に対して、他の誰にも感じたことのない想いを抱くようになった。

最初は友情と尊敬だったが、ただそれだけではない想い。

それが恋だと気付いても、初めての感情にただ戸惑うだけで、告白するまでには、少し時間が必要だった。
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