毒舌な君の,ひどく甘い素顔
それはごもっともだった。



『ごめんね。せっかく庇ってくれたのに……でもね,他の人にも伝えろって言ってくれただけでもう大丈夫なの』



それに,悪かったのは……



『私だって,良くなかったの。安易に引き受けたりして。あと他にもいるのにあの子だけ怒られるのはあれかなと思って……』



相手が今田くんなら尚更。

今田くんを好きな人とか憧れてる人は沢山いる。

好きな人に怒られるのってすごく悲しいと思うから。



『でもね,その……嬉しかった。ありがとう』



私が今田くんに心から笑いかけたとき,不服そうにしていた今田くんは,もたれていたドアから離れて私の方向に歩いてくる。



『どうしたの?』

『はぁ……笹原さんって意外ととんでもなくバカだよね。仕方ないから手伝ってあげる。でも,今日だけだから。次変な頼みごと受けてるの見たら殺すから』



まさか手伝ってくれるなんて思わなくて,すごく驚いたのを憶えてる。

そして,仕方なさそうに笑う今田くんを見て,心臓が意味分からない音をたてて,私は彼に恋をしたのだと知った。

今田くんの冷たい物言いからは,それを上回る優しさを感じた。
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