君と僕との相対性理論
学校の帰り?
『夜景、見に行こう』
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
この前の夕焼けを思い出す。
行きたいと、思ってしまった。
友達から〝ユキ〟や〝ましろちゃん〟と呼ばれている雪さん…。
『夕食も、この前言ってた和食、どうかな』
和食…。
こうして男性に誘われるのは、今までに無く。心がドキドキと鳴ってしまう。
ついこの間まではビクビクと恐怖が勝っていたのに。
優しい婚約者……。
優しい婚約者は結婚しても、優しいままなのだろうか。
兄の〝アバズレ〟という言葉を思い出す。
夜遅くに帰れば、そう思われても仕方が無いと。
それでも私は、言われるよりも雪さんに会いたいが勝ってしまった。
「…はい、父に言ってみます、きっと可能です」
『ほんと?』
「はい、この前、雪さんが父に言ってくださったから…」
『こっちからもまた連絡しておく、じゃあ明日の16時に学校までお迎えに行ってもいい?』
「…はい」
『じゃあまた明日ね』
電話を切り終え、1番に思ったのが〝盗聴器〟を持っていきたくないだった。
いつも学校には持っていっていない。
雪さんと会う時だけ仕掛けられている盗聴器。
だから持っていくのを忘れたと、誤魔化してもいいだろうか…
怒られたばかりなのに。
雪さんとの、優しい穏やかな時間を、盗聴器でドクドクと焦りたくない…。
その日の夜、父に会った時、雪さんの名前が出てきた。雪さんから父に連絡が行っていたようで、「西条様に迷惑はかけるな。明日、出張で家にいないから盗聴器は持っていかなくていい」と、それだけ告げられた。
それにホッとした私は、手を握りしめた。
朝いつも通りに学校へ行き、放課後になるのを今か今かと待った。
1日最後のチャイムが鳴り響き、私は走って校門へと向かった。
途中、急ぎすぎて名前も知らない男子生徒とぶつかってしまい、どこからどう考えても私が悪く。
けれども「平気」と笑った男子生徒に何度も謝った。
待ち合わせの時間。
雪さんは車を少し校門から離れた場所でとめていた。
運転席に乗ったままの雪さんは、私が来たことに気づくと、カチッと車のロックを外し「早かったね」と、扉を開けた。
「走らなくてよかったのに」
ふふ、と、静かに笑う雪さんに顔が熱くなる。だって、すぐに会いたかったから…。
決して私を好きになることは無い男に…。
好きになってはいけない。
好きになっても辛いだけなのに。
「すみません…」と謝ると、「謝らなくていいよ」と、私を車に乗せた。
助手席から見る雪さんの横顔は、整っていて。…どこからどう見ても釣り合わない私は、膝に置いている鞄を抱きしめた。
「昨日はごめんね」
「え?」
「電話、本当は会ってから聞こうと思ったんだけど。あいつがうるさくて」
あいつ…。
結婚式のことだとすぐに気づいた私は、「ご友人の方ですか?」と、車を走らせる雪さんを見る。
『夜景、見に行こう』
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
この前の夕焼けを思い出す。
行きたいと、思ってしまった。
友達から〝ユキ〟や〝ましろちゃん〟と呼ばれている雪さん…。
『夕食も、この前言ってた和食、どうかな』
和食…。
こうして男性に誘われるのは、今までに無く。心がドキドキと鳴ってしまう。
ついこの間まではビクビクと恐怖が勝っていたのに。
優しい婚約者……。
優しい婚約者は結婚しても、優しいままなのだろうか。
兄の〝アバズレ〟という言葉を思い出す。
夜遅くに帰れば、そう思われても仕方が無いと。
それでも私は、言われるよりも雪さんに会いたいが勝ってしまった。
「…はい、父に言ってみます、きっと可能です」
『ほんと?』
「はい、この前、雪さんが父に言ってくださったから…」
『こっちからもまた連絡しておく、じゃあ明日の16時に学校までお迎えに行ってもいい?』
「…はい」
『じゃあまた明日ね』
電話を切り終え、1番に思ったのが〝盗聴器〟を持っていきたくないだった。
いつも学校には持っていっていない。
雪さんと会う時だけ仕掛けられている盗聴器。
だから持っていくのを忘れたと、誤魔化してもいいだろうか…
怒られたばかりなのに。
雪さんとの、優しい穏やかな時間を、盗聴器でドクドクと焦りたくない…。
その日の夜、父に会った時、雪さんの名前が出てきた。雪さんから父に連絡が行っていたようで、「西条様に迷惑はかけるな。明日、出張で家にいないから盗聴器は持っていかなくていい」と、それだけ告げられた。
それにホッとした私は、手を握りしめた。
朝いつも通りに学校へ行き、放課後になるのを今か今かと待った。
1日最後のチャイムが鳴り響き、私は走って校門へと向かった。
途中、急ぎすぎて名前も知らない男子生徒とぶつかってしまい、どこからどう考えても私が悪く。
けれども「平気」と笑った男子生徒に何度も謝った。
待ち合わせの時間。
雪さんは車を少し校門から離れた場所でとめていた。
運転席に乗ったままの雪さんは、私が来たことに気づくと、カチッと車のロックを外し「早かったね」と、扉を開けた。
「走らなくてよかったのに」
ふふ、と、静かに笑う雪さんに顔が熱くなる。だって、すぐに会いたかったから…。
決して私を好きになることは無い男に…。
好きになってはいけない。
好きになっても辛いだけなのに。
「すみません…」と謝ると、「謝らなくていいよ」と、私を車に乗せた。
助手席から見る雪さんの横顔は、整っていて。…どこからどう見ても釣り合わない私は、膝に置いている鞄を抱きしめた。
「昨日はごめんね」
「え?」
「電話、本当は会ってから聞こうと思ったんだけど。あいつがうるさくて」
あいつ…。
結婚式のことだとすぐに気づいた私は、「ご友人の方ですか?」と、車を走らせる雪さんを見る。