君と僕との相対性理論
我が、神楽坂家は、男を中心としている。
つまりは長男家系。
父親、そして次に権力があるのは長男になる。

女は二の次。権力なんかない。
簡単に言えば、子供を産む機械。


その風習は昔から変わらない。
男は仕事へ行き、女は家を守り。
この世界では…普通なのだと。



「──…ほら、和夏。殴ってくれてありがとうございますは?」



兄にそう言われても、私は頭を下げて「ありがとうございます」と言わなければならない。



父や兄から与えられる〝躾〟らしいそれに対して、母は何も言わない。ううん、言うことが出来ない。
絶対だから。
男である父や兄からの言葉や行動は、絶対だから。
それが〝神楽坂〟なのだから。


「和夏の頭が悪いのはお前の育てが悪いからだろう!」


そう言って父は母に平手打ちをする。──パシン、と肌が弾く音を聞きながら、唇を噛んだ。
すみませんすみませんと、床に頭をつける母の姿をもう何回見たことだろう。


母は、私と一緒だ。
地位が低いところから、神楽坂に嫁いできた。


男には、忠誠を。

忠誠を…。

夫には、忠誠を…。

男には。





いやだ…。




もし、結婚すれば、西条雪は私にとっての忠誠を誓う人物になる…。


無意識のうちに、私は父と兄から殴られた頬に指先を当てていた。


愛のない結婚。


西条雪も、私のことを、殴るのだろうか…。



────…男の人が、怖い……。


結婚したくありません……。



もし私の口からそんな言葉が出た瞬間には、きっと殴られるだけじゃ済まされないだろう。
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