溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
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「あのっ、多賀谷(たがや)先輩は立神(たつがみ)信武(しのぶ)って作家をご存知ですか?」

 昼休み。
 たまたま一緒に休憩へ入ることになった先輩店員の多賀谷が、お堅い系の文芸コーナー担当の人だったので、日和美(ひなみ)は思わず聞いてしまった。

 大学がほど近いここ『三つ葉書店学園町店』近郊には喫茶店やレストラン、ハンバーガーショップ、コンビニなどが結構充実している。
 昼食は皆で交代制で取るようになっているので、あえて正午から十三時(いちじ)の混雑時を避けて外へ食べに出る者も多い。

 だが、今日日和美は信武にねだられて手作り弁当を、多賀谷はコンビニ弁当持参だったので、二人して正午に休憩室。差し向かいの席へ腰掛けてランチタイムを迎えていた。

 平日の昼間だからこそ出来たことだが、これが土日祝日なんかだと二人同時に休憩が重なるようなことは絶対にないらしい。

(まぁ私がまだ半人前で、そんなに戦力になれていないのもあるかも)

 即戦力とは言い難いと自分自身感じているから。
 もしかしたらベテラン先輩書店員と休憩に入ることで、何かを学べという意図もあるのかもしれない。

 なのに仕事のことよりも信武のことを聞いてしまった日和美だ。

「知ってるも何も……私、大の立神信武ファンよ!?」
 
 それまでは黙々と弁当をつついていた多賀谷がきらりと瞳を輝かせて、ほんの少し前のめりになる。

「なに、なに? ひょっとして山中さんも立神先生のファン?」

 身を乗り出すようにして聞かれた日和美は、多賀谷の余りの熱量にたじろいだ。
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