溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
「誉め言葉、どぉーも」

「褒めてませんっ!」

 気恥ずかしい胸のうちをククッと喉を鳴らすように笑って誤魔化したと言うのに、日和美(ひなみ)が頬をぷぅっと膨らませて一生懸命言い返してくるからたまらない。

 信武(しのぶ)は気が付くとテーブルに手を突くようにして身を乗り出して……日和美のあごをグイッと持ち上げて顔を近付けていた。

「し、のぶ、さっ……?」

 急に距離を削った信武へ怯えたように瞳を見開いた日和美を間近に見て、信武は(ちょっと待て! 俺、こいつに何しようとしてた!?)と固まってしまう。

 信武は今、日和美にキスをして、そのまま彼女を床へ押し倒して……そうしてそれからその先を……などと頭の中で想像してしまっていた自分を否定出来ない。

(日和美、まだ生理終わってねぇだろ!)

 自分の中の激情が危うく決壊しそうになったことへ、正直戸惑ってしまった信武だ。

(……盛りの付いたガキかよ!)

 脳内でピンク色の妄想ばかりがたくましく膨らんでいた、性経験のない子供(ティーン)の頃じゃあるまいに。

 変にがっついてしまったことが信じられなくてチッと舌打ちすると、
「バーカ。いくら俺でも《《今の段階で》》そこまで言わせる気はねぇわ」
 と吐き捨てて。

 だってそんなの、情事の時に取っておかねばもったいないではないか。



 吐息交じりにそう言い放った信武を見て、日和美が「でも……いつかは言わせる気なんですね……」と眉根を寄せた。
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