溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
 結局リビングの壁から取り外した萌風(もふ)もふ先生の『ときマカ』(正式名称『ときめきハプニング★ 午後のティータイムで王子様に見初められて身ごもりました⁉︎ 強引な茶葉の君はカラフルなマカロンでうぶな姫を魅了する』。←長いっ!)の壁掛け時計だって結局、隠すのがもったいなくて、枕元の壁にこっそりちゃっかり立てかけてあったりするし。

 不破(ふわ)がもしも日和美(ひなみ)の言いつけを破って、眠っている日和美に近付いたなら、必然的に目に入ること間違いなし!

 加えて布の掛かっていない本棚だって全面的に御開帳♪のままなのだ。

 健康的な成人女性の桃色な乙女心としては大いに襲いに来てほしいところだけれど、それをされると困るだなんて、一体どんな焦らしプレイだろう!

「はぁー……」

 大きく溜め息をついて、密かに耳を澄ませてみたり。

 安普請(やすぶしん)のアパートだ。薄い壁一枚で隔てられているだけなのに、聞き耳を立ててみても衣擦れの音ひとつしてこない。

(不破さんっ。もしかして重いお布団に押しつぶされて窒息してたりします!?)

 考えてみればどこぞの王族さまや貴族さまや御曹司さまが、綿入りの重い掛け布団なんて使ったことあるわけがないではないか!
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