溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
 その間に玉ねぎのスライスをフライパンで軽くしんなりする程度に炒めてから、そこへ一昨日しょうが焼きのタレに漬けこんでおいた豚肉を取り出して投入して。

 ジューと言う小気味よい音をさせながらしょうが焼きに火を通していたら、電子レンジが仕上がりを知らせてきた。


「いい匂いですね。……僕にも何か手伝えることがありますか?」

 気が付けば、布団を端に避け終わった不破(ふわ)日和美(ひなみ)のすぐ後ろに立っていて、日和美の手元を覗き込んでいた。

 思わず「ひゃっ!」と小さく声を上げて肩を跳ねさせたら、不破に悪戯っぽくクスクス笑われてしまう。

(あーん、王子っ、その笑顔は反則ですっ)

 心の中、(まるで新婚さんみたいっ!)とキュンキュンしながら、日和美はさっきレンジから取り出したひじきの煮物にちらりと視線を投げかけて。

「食器棚に小鉢が入ってるんですけど、それにアレ、盛りつけてもらってもいいですか?」

 キッチンの引き出しからとりわけ用の箸を出して不破に渡したら、「お安い御用です」とまたしてもキラースマイル。

(ぐっ。心臓がっ)

 何て思っていたら、危うくしょうが焼きを焦げ付かせてしまうところだった。
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