それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
こんなに嬉しかったの、いつぶりだろう。

私はこぼれるような笑みで、先生に近づいて報告した。

「期末試験、学年で11位だった!! 中間試験に続いて、最高順位、更新した~~~!!」

「まじで!?!? すごいじゃん!!! 頑張ったなあ!!!」

先生は弾けるような笑顔を浮かべながら、両手のひらを私に向ける。

「やったな!! 吉川!!」

「うん、やった!! 頑張った!!」

私は、自分の手のひらを、パチンと先生の手のひらにぶつける。

「しかも、今回、英語は学年1位だった!! 98点!!」

「1位?? すごいじゃん!!」

「それにね」

私の報告に、先生は続きを促すように、うんうん、と頷く。

「さっき返却されたんだけど、数学、初めて80点超えたよ!!」

「うわあ、本当に??」

先生は、「やったあ!!」と言いながら、まるで自分のことのように喜びながら、その場で万歳をした。

「試験前、先生に質問した問題が出てね、それ、きちんと解けたよ!! 先生のおかげ!!」

「お前~~~、嬉しいこと言ってくれるじゃんかあ」

先生は私の頭をゴシゴシと強くなでる。

「けど、やっぱりお前が頑張ったからだよ!! 本当によくやった!!」

「ありがとう!! 先生!!」

もう一度先生とパチンと手を合わす。


「沙帆!」

「翼?」

笑みを浮かべたまま、振り返る。

「どうしているの?」

「ん? さっき、畑中の授業、ここで受けていたから」

「そうだったんだ」

おい、呼び捨てにするな、と言う先生の言葉を無視して、翼はニッコリと微笑んだ。


「聞こえた。期末試験、結果、良かったんだな」

「うん、そうなんだ。一応ね、私にとっては、過去最高の順位だったんだよ!」

「よかったな、頑張ったな」

翼は先生とは打って変わって、優しく私の頭をなでてくれた。

「頑張ったのは、翼だよ。今回、2位だったよ。やっぱり私、まだまだ翼には及ばないね」

「吉川」

上から降ってきた声に、私はクルッと振り向く。

「お前、すごい頑張ったじゃん。児玉の結果と比較する必要なんてない」

「先生……」

確かにそうだ。
私だって、頑張ったんだから。

「そうだね……今回だけは先生の言う通りだ! なんといっても、私にとっては、過去最高の順位だったんだから」

「そうだぞ、素直に喜べ!」

“今回だけは”というのは聞き捨てにならないけど、と先生が付け加える。

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