それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「……今まで、悪かった」

少しの沈黙の後、翼は、はーっと長く息を吐きだした。

「沙帆が苦しんでいたことに、全く気付いていなかった。2年も一緒にいるのにな。何やってたんだろうな。ごめんな。彼氏、失格だな」

「そんなことない!!」

自嘲気味に笑いながら発した彼を、私は否定する。

「自分の気持ちを翼に伝えて来なかった、私が悪いの。それに、そもそも、私、お姉ちゃんと比べられることぐらいで悩んじゃいけないと思っていて……これぐらい、気にすることじゃないんだって、思い込んでたの」

「それでも、気づいてあげたかったな」

翼は、悲しそうに微笑む。

「沙帆のこと、本当に好きだから、ちゃんと気づいてあげたかった」

少し震える声で、翼が言う。

「悔しいな。自分の好きな人の悩みにさえ気づけなかった自分が、悔しい」

「悪いのは、私だよ。言葉で伝えなかった私が悪い」

「俺は、そうは思わない」

翼は自分の唇を、ギュッと強く噛んだ。

そうかな。
いくら好きな人でも、どれだけ傍にいる人でも、その人の気持ちを汲み取ることなんてきっと不可能で。
だからこそ、大切な人には、“言葉”で伝えないといけないのに。
どう考えても悪いのは、やっぱり私だよ。

「俺……」

数秒間の沈黙の後、翼は口を開く。

「俺、間違っていた」

なんだか今は、口を開くべきではない気がして、「何を?」と聞きたい気持ちをこらえて私は続きの言葉を待つ。

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