それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「先生! 早く!」

2組にノートを運び終えるという任務を終え、急いで屋上に向かう。

階段を駆け上りながらスマートフォンで時間を確認すると、花火大会が始まる時刻が表示されていた。

「ほら、もう始まっちゃうってば!」

自分よりも下にいる先生を急かす。

「わかっているって」

「わかっているなら急いでよ!」

「だって疲れたんだもん」

先生はゼーゼーと肩で息をする。


「私、先行くよ!?」

「お前なあ、さすがにそれは酷過ぎない?」

「そもそも、花火始まる前に呼び出した先生の方が酷いよね?」

のろのろと階段を上る先生を睨む。

「しかもさあ」

私はこれ見よがしに、「はあ」と大きくため息をつく。

「急いで運んだのに、職員室に鍵忘れているし」

私の責めるような言葉と口調に、「それはごめんって」と先生は謝る。

「まさか、もう戸締りされているなんて思わないだろ?」

「いやいや、普通、確認するよね?」

「しないだろ……」

その時、先生の言葉に被せるかのように、ドーン!!と大きい音が響き渡った。

間違いない。この音は……

「もう! 花火始まっちゃったじゃん!」

先生はやっと私に追いつくと、「もうゆっくり行こうぜ」と私の肩を叩いた。


「嫌だよ、私本当に先に行くよ? 花火始まっちゃったし、美羽たちも待たせているし」

「お前、普段いい奴なのに、たまにすっごく酷いよな?」

「うるさいなあ、特定の人に雑用押し付ける人の方が酷いんじゃないの」

先生と言い合いをしながら、残りの階段を上る。

やっと上り終え、屋上のドアをあけると、まるで私たちを待っていたかのように、頭上から花火が降ってきた。

「きれい……」

「きれいだな……」

あまりの迫力に、ドアを閉めることすら忘れて、私は呆然と空を見上げた。

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