甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「沙也さん、その白いワンピースよくお似合いね。今度私とも一緒にお買い物に行きましょう」


今日の私は以前に郁さんが見立ててくれたワンピースを身に着けていた。

嬉しいお誘いにぜひ、と返事をする。

この結婚を反対されず、和やかな雰囲気にホッと胸を撫で下ろす。


「母さん、沙也は俺の妻だから」


なぜか郁さんが不満そうな声を漏らす。


「郁、狭量な男は嫌われるぞ」


「またいつでもいらしてね」


おふたりの笑顔に見送られ、私たちは帰路に就いた。


自宅に戻ると、郁さんに今日の件についてお礼を言われた。


「疲れただろう? 母が質問攻めにしてすまなかった」


「いいえ、私を受け入れてくださって嬉しかったわ」


「当たり前だろう。沙也は俺が選んだんだ」


フッと片眉を下げた穏やかな表情に視線が釘付けになる。


「母の誘いに嬉しそうに応じる様子には妬けたが」


「妬けるって……せっかくのご厚意だから」


とんでもない発言に狼狽える。


「俺だけが沙也を独占したいんだ」


そう言って彼はそっと私の右手に触れ、指先に軽く歯を立てた。

小さな刺激に肩が跳ねる。

誘惑するような眼差しと甘い言葉に心の奥深くに秘めていた気持ちがどんどん膨れ上がる。


もう、限界だ。


これ以上は苦しすぎる。
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