甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
久しぶりに早く帰宅した彼と夕食をともにすると、話があると改まった口調で言われた。


『カフェレストランのオープン時に正式に結婚発表をしたい』


『発表の時期は郁さんに任せるわ。でも佐多くんに今、計画が大詰めでとても忙しいって聞いたけど大丈夫?』


『ああ、もう少しすれば落ち着く。入籍だけ急いで、結婚式の話もこれまでろくにできていなくて悪かった』


お前の夢なのに、と表情を曇らせた郁さんに首を横に振る。


『気にしないで。それより……私、仕事をこのまま続けたいのだけど……』


『もちろん辞める必要はない。今後妊娠して体がつらくなってきたらそのときは一緒に考えよう。せっかく沙也と一緒に仕事ができる機会を失いたくない』


『でも私は郁さんの仕事に特になにも……』


『沙也の着眼点はいつも新鮮でとても助かっているよ』


そう言って、郁さんは頬を緩める。

料理教室についてまとめた意見書を佐多くんから受け取った彼は、隅々まで目を通したそうだ。

私の仕事についてはずっと考えていた。

響谷ホールディングス副社長の妻という立場は、私の想像以上に重いものだろう。

茶道、華道の嗜みもなく、パーティーなどのマナーも明るくないうえ、響谷家のしきたりにも疎い。

佐月製菓で勤務しながらこれらを身に着けていくのは正直厳しい。

仕事も大切だが、今後必要になるであろう知識や所作を最優先で学び覚えるべきではと幾度となく考えた。
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