甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「……謝ってすむ話ではないし、謝罪だけして終わらせるつもりもないけれど……本当にごめんなさい。あなたに酷い言葉をぶつけて、大事な体にもかかわらず貧血を起こさせてしまった……体は大丈夫?」


「貧血になったのは飯野さんのせいではないですし、そもそもあのときは妊娠を誰も知らなかったんです。どうか気になさらないでください」


飯野さんの言葉に動揺し、傷ついたのは確かだ。

けれど彼女のこれまでの気持ちや立場を考えると、いきなり現れた結婚相手に文句を言いたくなる心情は理解できる。

それでも彼女は私に危害を加えなかったし、具合の悪くなった私を懸命に介抱しようとしてくれた。

薄れていく意識の中で、飯野さんの力強い声に励まされたのは事実だ。


「いいえ、私はあなたに声をかける資格はないの。関わるなと郁にも言われているし……でもあなたの姿をさっき偶然見かけて心配になってね」


「あの、関わるなってどういう意味ですか?」


寝耳に水の話に驚く。


「郁から聞いていない?」


うなずき、再度教えてほしいとお願いすると、飯野さんは言いにくそうに口を開いた。

郁さんに私が倒れたいきさつを尋ねられ、ありのままを伝えたそうだ。

怒った郁さんは私に近づかないよう言ったらしい。
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