甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「大事な妻を危険な目に合わせる人間に近づけたくないのは当然よ」


「でも、本当に飯野さんのせいでは」


「私が引き金になったのは紛れもない事実よ。あのときの郁の剣幕も心配もすごかったの。長年郁と一緒にいるけれどあんな姿は初めて見たわ……本気であなたを愛しているんだと思い知ったの。本当にごめんなさい。今さらだけど後悔と反省でいっぱいよ」


「いいえ、私のほうこそ助けていただいてありがとうございます。ずっと直接お礼も言わず申し訳ありませんでした」


私が頭を下げると、慌てたような声が頭上から聞こえた。


「やめてちょうだい。あなたが謝る必要はないわ。顔をあげて」


「だったら飯野さんも私に罪悪感を抱くのは終わりにしてください」


「でも……あなたと私では立場が違うわ」


困ったような声に、私は下を向いたまま続ける。


「それなら私はずっとこのままでいます」


「……もう、わかったわよ! あなたの言う通りにするから、早く頭を上げて。また具合が悪くなったらどうするの」


ゆっくり頭を持ち上げると、どこか疲れた様子の飯野さんが私を見つめていた。


「……あなたって、意外と頑固なのね。もっと弱々しいのかと思っていたわ。でもそうね、あの郁が好きになるくらいだもの、気概があるに決まってるわよね」


「郁さんの好みはよくわからないのですが……でも私も飯野さんのイメージが変わりました。郁さんが大事にする理由がわかります」


「元ライバルを褒めてどうするのよ」


呆れたように飯野さんが肩を落とす。
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