甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「……あの、もしよかったらこれからは私ともお付き合いしてもらえませんか?」


「え?」


「私、飯野さんみたいな仕事のできる、素敵な女性になりたいです」


「でも……私はあなたを傷つけようとしたのに……いいの?」


深く何度もうなずく私に、飯野さんは苦笑する。


「やっぱりあなたには敵わないわ。じゃあこれからよろしくね。それで、なにがあったの? この寒空の下飛び出してきた理由はなに? 喧嘩でもしたの?」


「喧嘩、はしてません」


「でもその格好、どう見ても衝動的な家出でしょう」


すっかり普段の調子に戻った飯野さんが鋭く切り込む。


「抱えているものがあるなら吐き出しなさいよ。私でわかる範囲なら教えるわ。車内は狭いしこのままの体勢はつらいでしょ。保くんの店で話しましょう」


「え、でも……」


「なにか簡単に食べながら女子会しましょう。今、口にできないものとかはある?」


首を振る私を尻目に、飯野さんは風間さんに電話をかけ、席の確保をしていた。

さらにスマートフォンをなにやら操作し続ける。

どこまでも行動的な姿に、私のほうが敵わないと内心思う。

飯野さんの運転する姿に驚くと、飯野さんが苦笑する。


「お嬢様のイメージを作りすぎよ。自分で運転すれば好きな場所に行けるから便利よ」


「ご両親から運転を禁止されないんですか?」


「もういい大人だから。いつまでも甘えていられないわ」


やはり私の元ライバルはとても素敵な人だと再認識した。
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