甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
陣痛がやってきた際、たまたま出勤していた彼は私の一報を聞くやいなやすぐに帰宅し、病院に連絡を取った。

彼自身も動揺して緊張していたはずなのに、私をなによりも気遣う姿に、締めつけるような痛みの中、手を握って感謝の気持ちを必死で伝えた。

永遠に続くかと思うような痛み、初めて経験する状況への不安と混乱でいっぱいの中、ずっと手を繋ぎ励まし続けてくれた郁さん。

無事に息子、耀が産声を上げ、元気な泣き声を披露してくれた際には安堵で力が抜け、ただただ感謝と喜びの涙があふれた。


『本当にお疲れ様。ありがとう、沙也』


目を真っ赤にして幾度となく口にする夫に、涙が止まらなくなったのは言うまでもない。

たくさん母乳を飲み、よく眠る息子は現在周囲の人々のちょっとしたアイドルになっている。

歩佳さんは『耀くんの顔を見るだけで癒される』と、たくさんの育児グッズを抱えてよく自宅を訪れる。

その度に私が育児疲れをしていないか確認し、心配してくれる。

塔子が懸念していた飯野グループのお菓子教室の一件は、両社で話し合いをすすめ、お互いの得意な部門を融合し共同事業として行うことになった。

オープンを迎えたカフェレストランの評判は上々で、教室とともに席がすぐに埋まる状況だ。

予約の問い合わせもひっきりなしにあり、嬉しい悲鳴を上げている。

今後この事業を他社にも広げようと計画していると塔子から教えられた。
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