本気の恋を、教えてやるよ。




組んだ両手に額を押し付けながら、唇を噛み締めて悔しそうに呻く梓ちゃん。


私はそんな梓ちゃんを、どこか他人事のように見つめていた。


私、稲葉茉莉。社会人五年目。
そんな私には、同い年の彼氏がいる。


筒井慶太(つついけいた)。私と梓ちゃんと同じ会社で働く同期だ。


慶太と初めて会ったのは入社式。


入社式でも、その後の研修でも席が隣で、慶太から話し掛けてくれて仲良くなった。


『俺の隣、稲葉で良かった〜!話しやすいし、助かるわ。配属先、同じだといいね』


内気で人と接するのが苦手だった私に、そう明るい笑顔を見せてくれた慶太はその頃からずっと憧れで。


その憧れが恋に変わるのに、そう時間はかからなかった。


付き合うことになったのは、一年目の冬。


文系の私と理系の慶太とでは研修内容も期間も違って、一足先に本社に配属されていた私は、秋頃、同じく本社に配属された慶太と再開した。


慶太はそれをすごく喜んでくれて、よくご飯なんかも行くようになって。


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