本気の恋を、教えてやるよ。




──昼休み。


「駒澤、ごめんね急に」


エントランスを出たところでスマホを弄ってた俺に声が掛けられる。


顔を上げると、キリッと真面目な顔つきの妻夫木が立っていた。


「や、大丈夫」


そう、妻夫木から来たメールの内容は、今日一緒に昼を食べないか、というものだった。


前に誘われた時は妻夫木のお願いを引き受けたお礼、という名目があったが今回は違う。


珍しい事もあるもんだな、と思いつつ特に断る理由もなく了承したが、なぜかやけに堅い表情なのが気になる。


「お店こっちで適当に決めていい?」

「ああ」

「茉莉、居なくてごめんね。今日は午前休なのよ」

「……おー」


聞いてもないのに教えられ、微妙な反応を返してしまう。


いや確かに、稲葉が居ないの珍しいなとは思ったけど……そんなにキョロキョロしたりはしてなかったはずだ。


じゃあなんでわざわざ稲葉について触れたんだ?



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