本気の恋を、教えてやるよ。
だけど、今はまるで靄がかかったように何も見えない。掴もうとしても、すり抜けてしまう。
私はもう一度小さくため息をついたあとで、【わかった。おやすみ】と返信し、スマホの電源を切った。
翌日。
あんな事があった翌日でも、仕事は待ってくれないので気乗りしないまま出勤する。
それでも仕事の忙しさは全てを忘れさせてくれて、気づけばお昼休憩のチャイムが鳴っていた。
キーボードから指を離し、うーん、と背伸びする。
と、人事部デスクの方から財布片手に梓ちゃんがこちらにやってくるのを見つけて、私は微笑んで立ち上がろうとした。
……のだけど。
「稲葉さん、ちょっといい?」
反対側から、いつの間にそこにいたのか。
バン、とやや強めに誰かに机を叩かれて、私はビクッと肩を跳ねさせた。視線の先で、梓ちゃんが怪訝そうな顔をしている。
誰だ……?と振り向いて、思わず目を丸くする。