本気の恋を、教えてやるよ。



「なに?」

「あれ、稲葉さんの……」


いつになく深刻そうな顔をした壱人の視線を辿れば、そこに立っていたのは俺が大嫌いな人物だった。


「……筒井慶太」


ぼそりと確認するようにその名を呟けば、俺の声が聞こえたのか、前から歩いてきていた筒井がハッとしたように顔を上げた。


そして俺の顔を見つけると──。


「楽斗……っ!」


壱人が叫んだのは多分、俺のことを見つけた筒井が突然俺に殴りかかってきたから。


突然過ぎて交わしきれなかった拳が頬を掠って熱を持った。


「……ってぇな、いきなり何すんだよ」

「頼むから消えろよ……」

「あ?」

「俺と茉莉の前から消えろ!」


そう怒鳴った筒井の顔は、苦しそうで、少し泣きそうで。


俺は思わず固まってしまった。


は?なんだよそれ。なんなんだよそれ。


そんなのこっちの台詞だろ。


消えろ、なんて。なんでそんなに──。



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