本気の恋を、教えてやるよ。



「は?いや待て、何でだよ」


上機嫌で立ち上がり、俺の後ろを通り過ぎようとする壱人の裾を掴んで引っ張る。


つんのめった壱人は寸でのところで体勢を整えながら、ふくれっ面で俺を見下ろした。


「なんだよ!お礼だと思って奢ってくれてもいいだろ〜」

「なんの礼だよ」

「合宿に稲葉さんを誘ってあげたのは誰だったかな〜?お陰様で随分仲良くなったみたいで?」

「……」


なるほどな。

確かにそう言われてしまうと言い返せない。


……仕方ねえな。


「分かったよ」

「よっしゃ、高い酒頼も」

「調子乗んな。一杯だけだからな」


ゴスっと壱人の後頭部を叩きながら、パソコンの電源を落とし、リュックに仕舞いこむ。


「誰もいないなー」

「もう九時だし、金曜日だからな」


このフロアも俺たちが最後で、電気を消し戸締りをしながら廊下に出る。


今頃稲葉は何してんだろうなーなんてボーッと考えながら歩いていたら「おい、楽斗」と壱人に袖を引っ張られた。



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