本気の恋を、教えてやるよ。
思い出に耽っていると、慶太が微笑んで、「そっちで話そう」と言う。
「そうだね……」
プレゼントもまだ渡せてないからね。おどけるように言うけど、慶太はやっぱり儚い笑みを浮かべるだけで。
何か言ってよ、と喉元まで出かけた言葉を呑み込んだ。
……これ以上、何を望むっていうの。
また昔の二人みたいに戻れて、幸せで。
これ以上望むことなんて、何も無いでしょう。
「……茉莉」
だから──。
「別れよう、俺たち」
何も望まないから、これ以上──何も奪わないでよ。
一瞬、世界中の全ての音が消えたような錯覚に陥った。
クリアな世界で、慶太の声だけがやけに響いて。
「え……?」
やっとのことで出せた声は、酷く掠れていて、小さくて。彼の耳に届いたのかさえ分からない。
「だから、別れよう」
でも、そんな声でも確かに彼には届いていたらしい。無情にも言葉を重ねられ、身体が芯から冷えていく。