本気の恋を、教えてやるよ。




「……楽斗、元気出せ」

「何がだよ」


哀れむような眼差しでポン、と俺の肩に手を乗せてきた壱人を睨む。


人の気も知らねえで……。


──いっその事、諦められれば楽なのだ。


だけどそんなのは無理で。どうしたって稲葉のことが好きで、愛しくて。


「ほんと……厄介すぎる」

「えっ、そんなヤバいバグ見つかった?」

「ちげー……」


恋が、こんなに難しいだなんて知らなかった。





結局、仕事が終わったのは九時過ぎだった。


クリスマスなのに容赦ない残業だったぜ……なんて壱人がげっそりしているのを横目に外に出れば、朝降っていなかった雪が舞っていて。


手を伸ばせば、ふわりと落ちてきて、瞬きの間に溶けて消える。


「お、雪降ってる!」


雪に気づいた壱人が目をキラキラさせながら飛び出していった。


……ったく、小学校のガキかよ。



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