本気の恋を、教えてやるよ。



そして次の言葉に、俺は耳を疑った。


「フラれたの……っ…」


「……え?」


フラれた?誰が──誰に?


言葉の意味が上手く飲み込めなくて、混乱する。でも、話の流れからしてきっと……いいや、絶対──、


「筒井に、か……?」


泣いてる稲葉に追い打ちをかけるのもどうなんだと思わないでもなかったが、ちゃんと確かめたくて聞き返すと、こくりと稲葉は頷いた。


あの、筒井が?


俺に敵対心剥き出しで、もう関わらないでくれなんて泣きそうな顔で懇願してきたあの男が?


はは、まさか……。


だけど目の前で、見たこともないほど顔を真っ赤にして泣きじゃくっている稲葉は本物で。


「……っ、」


俺はどうしようもなくなって、上から覆い被さるように強く稲葉を抱き込んだ。


ごめん。ごめんな。


浅ましい俺をどうか許して。


稲葉と筒井が別れたと聞いて、俺の心の中には驚きと──期待、半分。



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