本気の恋を、教えてやるよ。



不思議に思いゆっくりと目を開くと、陶器のような肌に一筋の涙を落とし、立木さんが震えていた。


「なんで避けないの……」

「……立木さ、」

「なんで、こんな負けた気持ちになるのよ……」


呼ぼうとした声は、苦しそうな声に遮られてしまう。


何を言えばいいかわからなくて口を閉ざす私を、立木さんは真っ赤に充血した目で捉えた。


それから、頬に残る涙の跡を消すように擦り、唇を歪める。


「なんだか、私が一人で怒って、空回って、バカみたい」


はあ、とため息をついた立木さんが財布から千円札を取り出し、机に置く。


そのまま立ち上がってしまうので、戸惑って見上げると困ったように眉を下げられた。


「……ご飯なんて食べる気分じゃないの。わかるでしょ?」

「……立木さん」

「私が言えたことじゃないけど、あなた、もう少し自分のこと大切にしたら?」


立木さんはそう言うと、そのままお店を出ていってしまった。




< 25 / 392 >

この作品をシェア

pagetop