本気の恋を、教えてやるよ。



佐川くんの言葉にうんと頷きながら、二人にメニューを手渡す。


駒澤くんにメニューを渡す時、バチッと視線が合って、駒澤くんは微笑む。


「今年も四人は特に変わらずだな」

「うん、異動とか無くて良かった」


別の部署に行くのが嫌な訳では無いけど、本社からは離れたくない。……駒澤くんが居るから。


そんな私の気持ちを察したのか、駒澤くんも優しく口元を緩め──しかし、ほんの僅かにその瞳を陰らせた。


「でも、アイツとは同じ──」

「え?」


小さく形の良い唇が動き、何かを喋ったことはわかった。でも、よく聞こえなくて聞き返すと、駒澤くんはハッとした顔で、「や、なんでもない」と眉を下げる。


「仕事も落ち着いてきたから、時間が合う時はまた一緒に帰ろうな」

「うん!」


駒澤くんは私なんかより遥かに忙しくて、残業することも多い。



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